スエズにてスエズ、そこは紅海の街。 スエズ、そこは難関の彼方。 スエズ、そこは… 小振りなキャラック船に揺られ、 強い逆風と凶悪なアラビアンガレーに翻弄されながらたどり着いた者は、 その街の中心で異口同音にこう叫ぶという。 もうこねぇよ!! スエズ、そこは若き冒険者を強くする街。 「はぁ・・・、どうやって帰ろう・・・」 砂と涙で顔をぐちゃぐちゃに汚して彷徨い歩く冒険者に、 一頭のラクダが優しい目で語りかけてきます。 「あぁ・・・ラクダさん・・・。ボクはいったいどうすれば・・・」 冒険者は『とりあえず買うものもないので』と交易所で仕入れた、 媚薬の樽を引きずりながらラクダさんに近づきます。 「ラクダさん、ラクダさん。お願いです」 「ボクをベイルートまで運ん…」 パクッ。 「あ…あ……、帽子を食べないでぇ…」 スエズ、そこは冒険者の涙でぬれる街。 |